【セ】xFIPを用いた投手成績変動予測
ねらい
セイバーメトリクス指標のひとつにxFIPというものがあります。味方野手の守備力や運の要素を排除して投手成績を評価する指標で、防御率と比較して年度毎の変動が小さいことから次シーズンの成績予測に一定の成果が期待できます。本稿では、セ・リーグの主力投手について2019年シーズンのxFIPを防御率と比較し、2020年シーズンに成績が好転するのか、あるいは悪化するのか予測します。
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対象選手
セ・リーグ各球団の主力投手14~16名(退団した選手を除く)
巨人
髙橋優貴、澤村拓一、大竹寛、菅野智之、田口麗斗、宮國椋丞、鍵谷陽平、桜井俊貴、中川皓太、メルセデス、今村信貴、戸根千明、高木京介、デラロサ
DeNA
東克樹、石田健大、井納翔一、大貫晋一、三嶋一輝、山﨑康晃、今永昇太、濵口遥大、上茶谷大河、京山将弥、パットン、武藤祐太、平良拳太郎、エスコバー、国吉佑樹、藤岡好明
阪神
能見篤史、西勇輝、岩貞祐太、岩田稔、藤川球児、髙橋遥人、浜地真澄、守屋功輝、秋山拓巳、青柳晃洋、望月惇志、岩崎優、島本浩也、ガルシア
広島
九里亜蓮、大瀬良大地、今村猛、野村祐輔、中﨑翔太、床田寛樹、一岡竜司、塹江敦哉、ジョンソン、島内颯太郎、山口翔、アドゥワ誠、菊池保則、中村恭平、遠藤淳志、フランスア
中日
小笠原慎之介、谷元圭介、又吉克樹、柳裕也、岡田俊哉、大野雄大、梅津晃大、山井大介、祖父江大輔、福敬登、三ツ間卓也、清水達也、藤嶋健人、山本拓実、ロメロ、R.マルティネス
ヤクルト
石山泰稚、高梨裕稔、大下佑馬、原樹理、清水昇、石川雅規、近藤一樹、坂本光士郎、小川泰弘、山田大樹、マクガフ、梅野雄吾、高橋奎二、五十嵐亮太
xFIP
計算式および指標の説明は以下のリンクをご参照ください。
1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.
なお、外野フライ数ではなくフライ数を用いました。
フライに占める本塁打の割合は7.05%、定数は3.04です。
分析結果
パ・リーグの対象選手も含めて線形近似を行ったところ、xFIPと防御率の間に一定の正の相関が認められました。
各選手について得られた数式とxFIPから推定防御率(理論上の防御率)を算出しました。2019年の防御率との差を推定防御率で除することで2020年の成績変動可能性を検討しました。つまり、”投球内容に相応しい防御率と実際の防御率との乖離”を実際の防御率の高低が与える影響を小さくなるようスケールしたパラメータです。数値が負なら成績好転、正なら成績悪化の可能性があると言え、0から離れているほどその可能性が大きいです。
巨人
成績好転可能性大:田口
成績好転可能性小:菅野、高木
成績悪化可能性小:高橋、澤村、中川
成績悪化可能性大:鍵谷、戸根
DeNA
成績好転可能性大:大貫、パットン、国吉
成績好転可能性小:井納、三嶋、京山、平良
成績悪化可能性小:石田、武藤、エスコバー
成績悪化可能性大:山﨑、藤岡
阪神
成績好転可能性大:高橋、浜地
成績好転可能性小:能見、秋山、ガルシア
成績悪化可能性小:西、青柳
成績悪化可能性大:藤川、岩崎、島本
広島
成績好転可能性大:塹江
成績好転可能性小:島内
成績悪化可能性小:今村、中﨑、床田、ジョンソン、菊池、遠藤、フランスア
成績悪化可能性大:一岡
中日
成績好転可能性大:岡田
成績好転可能性小:山井、ロメロ
成績悪化可能性小:小笠原、大野、祖父江
成績悪化可能性大:梅津、福、山本
ヤクルト
成績好転可能性大:高梨、清水、高橋
成績好転可能性小:大下、原、小川、梅野
成績悪化可能性小:近藤
成績悪化可能性大:石山、五十嵐
総評
各球団の主力投手について成績変動可能性を検討しました。あくまで2019年シーズンの成績と比較して防御率が好転するか悪化するかという予測に過ぎないので、参考までにとどめておくべきかと思います。
また、xFIPの式にはフライに占める本塁打の割合を含んでいますが、本拠地による本塁打の出やすさの違い(PF:パークファクター)を考慮していません。より詳細な分析を試みるにはこれは不可欠でしょう。
個人的に特に動向を注目したい選手は、
好転では田口(巨人)、大貫(DeNA)、浜地(阪神)、小川(ヤクルト)、
悪化では山﨑(DeNA)、ジョンソン(広島)です。
まとめ
各球団の主力投手の成績変動予測を行いました。