【パ】xFIPを用いた投手成績変動予測
ねらい
セイバーメトリクス指標のひとつにxFIPというものがあります。味方野手の守備力や運の要素を排除して投手成績を評価する指標で、防御率と比較して年度毎の変動が小さいことから次シーズンの成績予測に一定の成果が期待できます。本稿では、パ・リーグの主力投手について2019年シーズンのxFIPを防御率と比較し、2020年シーズンに成績が好転するのか、あるいは悪化するのか予測します。
セ・リーグ編はこちら
対象選手
パ・リーグ各球団の主力投手15~18名(退団した選手を除く)
西武
今井達也、髙橋光成、増田達至、松本航、多和田真三郎、十亀剣、平井克典、森脇亮介、榎田大樹、佐野泰雄、小川龍也、本田圭佑、ニール、平良海馬
大竹耕太郎、二保旭、加治屋蓮、東浜巨、武田翔太、甲斐野央、和田毅、高橋礼、椎野新、モイネロ、森唯斗、千賀滉大、松田遼馬、髙橋純平、嘉弥真新也、松本裕樹
松井裕樹、岸孝之、則本昂大、塩見貴洋、弓削隼人、ブセニッツ、青山浩二、宋家豪、菅原秀、森原康平、高梨雄平、辛島航、久保裕也、石橋良太、涌井秀章、酒居知史
ロッテ
佐々木千隼、石川歩、唐川侑己、東條大樹、東妻勇輔、松永昂大、西野勇士、小島和哉、岩下大輝、田中靖洋、チェン・グァンユウ、益田直也、種市篤暉、二木康太、美馬学、ハーマン
日本ハム
加藤貴之、上沢直之、有原航平、浦野博司、金子弌大、上原健太、宮西尚生、井口和朋、堀瑞輝、西村天裕、秋吉亮、ロドリゲス、公文克彦、石川直也、玉井大翔、杉浦稔大
オリックス
山﨑福也、山岡泰輔、吉田一将、荒西祐大、増井浩俊、近藤大亮、竹安大知、アルバース、田嶋大樹、Kー鈴木、ディクソン、比嘉幹貴、山本由伸、海田智行、澤田圭佑、山田修義、榊原翼、張奕
xFIP
計算式および指標の説明は以下のリンクをご参照ください。
なお、外野フライ数ではなくフライ数を用いました。
フライに占める本塁打の割合は6.72%、定数は2.93です。
分析結果
セ・リーグの対象選手も含めて線形近似を行ったところ、xFIPと防御率の間に一定の正の相関が認められました。
各選手について得られた数式とxFIPから推定防御率(理論上の防御率)を算出しました。2019年の防御率との差を推定防御率で除することで2020年の成績変動可能性を検討しました。つまり、”投球内容に相応しい防御率と実際の防御率との乖離”を実際の防御率の高低が与える影響を小さくなるようスケールしたパラメータです。数値が負なら成績好転、正なら成績悪化の可能性があると言え、0から離れているほどその可能性が大きいです。
西武
成績好転可能性大:多和田、榎田
成績好転可能性小:高橋、本田
成績悪化可能性小:小川、ニール
成績悪化可能性大:増田
ソフトバンク
成績好転可能性大:加治屋、東浜、甲斐野、松本
成績好転可能性小:武田、和田
成績悪化可能性小:高橋礼、椎野、森、高橋純平、嘉弥真
成績悪化可能性大:モイネロ
楽天
成績好転可能性大:涌井、酒居
成績好転可能性小:岸、弓削
成績悪化可能性小:青山、菅原
成績悪化可能性大:ブセニッツ、宋、森原、高梨
ロッテ
成績好転可能性大:唐川、二木
成績好転可能性小:東妻、小島、美馬
成績悪化可能性小:松永、田中
成績悪化可能性大:佐々木、益田
日本ハム
成績好転可能性大:浦野、上原
成績好転可能性小:堀、石川
成績悪化可能性小:有原、金子、秋吉
成績悪化可能性大:宮西、井口、玉井
オリックス
成績好転可能性大:荒西、増井、アルバース、比嘉、張奕
成績好転可能性小:山岡、竹安、澤田
成績悪化可能性小:榊原
成績悪化可能性大:山本、海田
増田(西武)、モイネロ(ソフトバンク)、ブセニッツ(楽天)、森原(楽天)、益田(ロッテ)、宮西(日本ハム)らパ・リーグを代表するリリーフ投手に成績悪化の可能性があります。各投手とも元の成績が優れているので成績悪化したところで防御率2点代中盤~3点代という予測ですが、試合終盤の得点は2019年よりも増えるかもしれません。
西武は中心選手であるニールや増田に悪化可能性があり、好転予想の多和田が不在かつ榎田も安定感を欠いている今季、より厳しい投手運用を強いられるかもしれません。今井・高橋・松本ら若手先発陣や新入団の宮川・ギャレットらの奮起に期待がかかります。
個人的な注目選手は、
好転では高橋(西武)、涌井(楽天)、小島(ロッテ)、
まとめ
パ・リーグ各球団の主力投手の成績変動予測を行いました。
【セ】xFIPを用いた投手成績変動予測
ねらい
セイバーメトリクス指標のひとつにxFIPというものがあります。味方野手の守備力や運の要素を排除して投手成績を評価する指標で、防御率と比較して年度毎の変動が小さいことから次シーズンの成績予測に一定の成果が期待できます。本稿では、セ・リーグの主力投手について2019年シーズンのxFIPを防御率と比較し、2020年シーズンに成績が好転するのか、あるいは悪化するのか予測します。
パ・リーグ編はこちら
対象選手
セ・リーグ各球団の主力投手14~16名(退団した選手を除く)
巨人
髙橋優貴、澤村拓一、大竹寛、菅野智之、田口麗斗、宮國椋丞、鍵谷陽平、桜井俊貴、中川皓太、メルセデス、今村信貴、戸根千明、高木京介、デラロサ
DeNA
東克樹、石田健大、井納翔一、大貫晋一、三嶋一輝、山﨑康晃、今永昇太、濵口遥大、上茶谷大河、京山将弥、パットン、武藤祐太、平良拳太郎、エスコバー、国吉佑樹、藤岡好明
阪神
能見篤史、西勇輝、岩貞祐太、岩田稔、藤川球児、髙橋遥人、浜地真澄、守屋功輝、秋山拓巳、青柳晃洋、望月惇志、岩崎優、島本浩也、ガルシア
広島
九里亜蓮、大瀬良大地、今村猛、野村祐輔、中﨑翔太、床田寛樹、一岡竜司、塹江敦哉、ジョンソン、島内颯太郎、山口翔、アドゥワ誠、菊池保則、中村恭平、遠藤淳志、フランスア
中日
小笠原慎之介、谷元圭介、又吉克樹、柳裕也、岡田俊哉、大野雄大、梅津晃大、山井大介、祖父江大輔、福敬登、三ツ間卓也、清水達也、藤嶋健人、山本拓実、ロメロ、R.マルティネス
ヤクルト
石山泰稚、高梨裕稔、大下佑馬、原樹理、清水昇、石川雅規、近藤一樹、坂本光士郎、小川泰弘、山田大樹、マクガフ、梅野雄吾、高橋奎二、五十嵐亮太
xFIP
計算式および指標の説明は以下のリンクをご参照ください。
1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.
なお、外野フライ数ではなくフライ数を用いました。
フライに占める本塁打の割合は7.05%、定数は3.04です。
分析結果
パ・リーグの対象選手も含めて線形近似を行ったところ、xFIPと防御率の間に一定の正の相関が認められました。
各選手について得られた数式とxFIPから推定防御率(理論上の防御率)を算出しました。2019年の防御率との差を推定防御率で除することで2020年の成績変動可能性を検討しました。つまり、”投球内容に相応しい防御率と実際の防御率との乖離”を実際の防御率の高低が与える影響を小さくなるようスケールしたパラメータです。数値が負なら成績好転、正なら成績悪化の可能性があると言え、0から離れているほどその可能性が大きいです。
巨人
成績好転可能性大:田口
成績好転可能性小:菅野、高木
成績悪化可能性小:高橋、澤村、中川
成績悪化可能性大:鍵谷、戸根
DeNA
成績好転可能性大:大貫、パットン、国吉
成績好転可能性小:井納、三嶋、京山、平良
成績悪化可能性小:石田、武藤、エスコバー
成績悪化可能性大:山﨑、藤岡
阪神
成績好転可能性大:高橋、浜地
成績好転可能性小:能見、秋山、ガルシア
成績悪化可能性小:西、青柳
成績悪化可能性大:藤川、岩崎、島本
広島
成績好転可能性大:塹江
成績好転可能性小:島内
成績悪化可能性小:今村、中﨑、床田、ジョンソン、菊池、遠藤、フランスア
成績悪化可能性大:一岡
中日
成績好転可能性大:岡田
成績好転可能性小:山井、ロメロ
成績悪化可能性小:小笠原、大野、祖父江
成績悪化可能性大:梅津、福、山本
ヤクルト
成績好転可能性大:高梨、清水、高橋
成績好転可能性小:大下、原、小川、梅野
成績悪化可能性小:近藤
成績悪化可能性大:石山、五十嵐
総評
各球団の主力投手について成績変動可能性を検討しました。あくまで2019年シーズンの成績と比較して防御率が好転するか悪化するかという予測に過ぎないので、参考までにとどめておくべきかと思います。
また、xFIPの式にはフライに占める本塁打の割合を含んでいますが、本拠地による本塁打の出やすさの違い(PF:パークファクター)を考慮していません。より詳細な分析を試みるにはこれは不可欠でしょう。
個人的に特に動向を注目したい選手は、
好転では田口(巨人)、大貫(DeNA)、浜地(阪神)、小川(ヤクルト)、
悪化では山﨑(DeNA)、ジョンソン(広島)です。
まとめ
各球団の主力投手の成績変動予測を行いました。
【2018野手編】一軍成績と二軍成績との関係性を調査する
2018年に1軍・2軍両方で100以上の打席に立った野手について、その成績の関係性について調査した。
先に2019年編をご覧いただきたい。
対象選手
2018年に一軍および二軍両方で100以上の打席に立った選手、計28人を対象とした。
左から、球団、背番号、名前、守備位置、開幕時年齢、年数
巨 56 山本 泰寛 内野手 25歳 3年
阪 2 北條 史也 内野手 24歳 6年
阪 9 髙山 俊 外野手 25歳 3年
阪 55 陽川 尚将 内野手 27歳 5年
阪 60 中谷 将大 外野手 25歳 8年
広 95 バティスタ 外野手 26歳 3年
中 44 モヤ 外野手 27歳 1年
ヤ 36 廣岡 大志 内野手 21歳 3年
西 65 斉藤 彰吾 外野手 29歳 11年
ソ 0 髙田 知季 内野手 28歳 6年
ソ 8 明石 健志 内野手 32歳 15年
ソ 22 西田 哲朗 内野手 27歳 9年
ソ 24 長谷川勇也 外野手 34歳 12年
ソ 36 牧原 大成 内野手 26歳 8年
ソ 46 本多 雄一 内野手 34歳 13年
楽 25 田中 和基 外野手 24歳 2年
楽 29 山下 斐紹 捕手 26歳 8年
楽 36 内田 靖人 内野手 23歳 5年
ロ 10 加藤 翔平 外野手 27歳 6年
ロ 31 菅野 剛士 外野手 25歳 1年
日 12 松本 剛 内野手 25歳 7年
日 21 清宮幸太郎 内野手 19歳 1年
日 23 渡邉 諒 内野手 23歳 5年
日 38 石井 一成 内野手 24歳 2年
オ 5 西野 真弘 内野手 28歳 4年
オ 12 マレーロ 内野手 30歳 2年
オ 24 宮﨑 祐樹 外野手 32歳 8年
オ 56 武田 健吾 外野手 24歳 6年
調査方法
以下の6つの項目について、一軍成績と二軍成績を用いて単回帰分析を行った。
打率、出塁率、長打率、四球率(BB%)、三振率(K%)、XR27
※四球率は敬遠を除く
※XR27とは、その選手9人で打線を組んだ場合に1試合で何点取れるかを表す。総合的な得点創出能力を示す指標である。
結果
それぞれの項目について、決定係数は以下の値となった。
打率:0.00
出塁率:0.00
長打率:0.06
四球率:0.08
三振率:0.56
XR27:0.01
項目ごとに図を示す。
前回に続き三振率にのみ一定の相関が認められた。
三振率は対戦投手の能力によって左右されにくいことが窺える。
どのような選手が1軍で成績を落とすのか、または維持するのか、打席結果のみで判断することは難しい。1球ごとの指標、例えば空振り率やボール球見極め率を含めて判断する必要性がありそうだ。しかし、2軍戦における詳細な成績の収集は容易ではない。中継を見ながら投球のコースやスイング・コンタクトの有無を収集することは、不可能ではないが非現実的である。
まとめ
野手の1軍成績と2軍成績の間にて、三振率にのみ一定の相関が認められた。
三振率は対戦投手の能力によって左右されにくい可能性が示唆された。
【投手】2000年度生まれプロ野球選手の1年目成績【吉田輝星世代】
2000年度生まれ野手の1年目成績をまとめました。
注目選手の寸評と来季の展望を記しました。
一軍成績
2人が初登板および初勝利を記録しました。吉田は初登板での初勝利でした。
吉田輝星
夏の甲子園を沸かせたスター選手がプロでの第一歩を踏み出しました。6月12日の広島戦では5回1失点で初登板初勝利を記録。投球数84球のち8割に迫る67球でストレートを投じ、最大の武器がプロでも通用する可能性を大いに感じさせました。その後は苦しい投球が続きましたが、2軍では新人離れした奪三振能力を発揮しなかなかの成績を残しました。来季開幕から1軍で先発ローテとはいかないでしょうが、最も動向を注視したい投手の一人です。
戸郷翔征
スリークオーターぎみのフォームから最速154km/hのストレートを投げ込む右腕です。ドラフト6位指名ながら同世代の投手の中で最も好成績を残しました。勝てば優勝という9月21日のDeNA戦で異例の初登板を果たし、4回2/3を投げ2失点と堂々の投球を披露したのが印象的でした。しかし、注目すべきはそれに至る二軍での成績で、42回を投げ与四球8、奪三振44という非常に完成された投球でした。背番号を13に変更するなど首脳陣からの期待も厚く、開幕から先発ローテに入る可能性も十分にあります。
二軍成績
19人が登板しました。
古谷拓郎
鎌ヶ谷市出身で習志野高校卒業という地元のスター候補です。将来性を買われてドラフト6位で入団した右投手ですが、二軍では高卒ルーキー最多の6勝を挙げるなど、戸郷・吉田の次に好成績を残しました。特徴的だったのは与四球で、50投球回に対して11(9回あたり1.98)と高水準でした。千葉ロッテの先発投手は層が厚いので、来季は一軍デビューが目標になるでしょう。
この年代の投手は全体的に苦戦を強いられました。1学年下に佐々木・奥川ら有望な投手が揃っているだけに、負けじと頑張ってほしいですね!
【2019投手編】一軍成績と二軍成績との関係性を調査する
前回の野手編に続き、今回は投手についての調査結果を記載する。
本稿の前に野手編をご覧いただきたい。
対象選手
2019年に一軍および二軍両方で100以上の打者と対戦した投手、計65人を対象とした。
左から、球団、背番号、名前、開幕時年齢、年数
広 16 今村 猛 27 10年
広 19 野村 祐輔 29 8年
広 47 山口 翔 19 2年
広 48 アドゥワ誠 20 3年
広 66 遠藤 淳志 19 2年
ヤ 14 高梨 裕稔 27 6年
ヤ 17 清水 昇 22 1年
ヤ 26 坂本光士郎 24 1年
ヤ 28 ブキャナン 29 3年
ヤ 34 山田 大樹 30 13年
巨 12 髙橋 優貴 22 1年
巨 17 大竹 寛 35 18年
巨 28 田口 麗斗 23 6年
巨 45 今村 信貴 25 8年
巨 49 ヤングマン 29 2年
De 11 東 克樹 23 2年
De 15 井納 翔一 32 7年
De 16 大貫 晋一 25 1年
De 24 齋藤 俊介 25 2年
De 48 京山 将弥 20 3年
De 59 平良拳太郎 23 6年
De 94 笠井 崇正 24 3年
中 28 梅津 晃大 22 1年
中 29 山井 大介 40 18年
中 30 阿知羅拓馬 26 6年
中 43 三ツ間卓也 26 4年
中 46 鈴木 博志 22 2年
中 50 清水 達也 19 2年
中 59 山本 拓実 19 2年
神 17 岩貞 祐太 27 6年
神 21 岩田 稔 35 14年
神 29 髙橋 遥人 23 2年
神 36 浜地 真澄 20 3年
神 46 秋山 拓巳 27 10年
神 61 望月 惇志 21 4年
神 77 ガルシア 29 2年
西 17 松本 航 22 1年
西 28 森脇 亮介 26 1年
西 30 榎田 大樹 32 9年
西 45 本田 圭佑 25 4年
西 54 ニール 30 1年
ソ 10 大竹耕太郎 23 2年
ソ 13 二保 旭 28 11年
ソ 21 和田 毅 38 13年
ソ 66 松本 裕樹 22 5年
日 29 井口 和朋 25 4年
日 33 バーベイト 26 1年
オ 11 松葉 貴大 28 7年 ※
オ 14 吉田 一将 29 6年
オ 15 荒西 祐大 26 1年
オ 21 竹安 大知 24 4年
オ 30 K-鈴木 25 2年
オ 42 エップラー 26 1年
オ 98 張 奕 25 3年
ロ 11 佐々木千隼 24 3年
ロ 18 涌井 秀章 32 15年
ロ 34 土肥 星也 23 3年
ロ 43 小島 和哉 22 1年
ロ 48 中村 稔弥 22 1年
楽 20 安樂 智大 22 5年
楽 21 釜田 佳直 25 8年
楽 23 弓削 隼人 24 1年
楽 31 福井 優也 31 9年
楽 45 菅原 秀 24 3年
楽 60 古川 侑利 23 6年 ※
※シーズン途中にオリックスから中日に移籍した松葉投手、楽天から巨人に移籍した古川投手は前に所属していた球団での成績のみ用いた。
調査方法
以下の7つの項目について、一軍成績と二軍成績を用いて単回帰分析を行った。
防御率、奪三振率(K%)、与四球率(BB%)、K/BB、被本塁打率(被HR%)、FIP、WHIP
※奪三振率、与四球率、被本塁打率は9イニングあたりの数を表すのが通例であるが、打者編で用いた数値とスケールを統一するためパーセンテージ表記を用いた。
※FIPとはDIPS指標のひとつである。DIPSとは、味方野手の守備力の影響を受ける被安打を排除し、投手自身でコントロールできる奪三振、与四球、被本塁打を用いて投手を評価する方法。
結果
項目ごとに図を示す。
単回帰分析の結果、決定係数が最も高かったのは与四球率(BB%)であった。与四球率と奪三振率の商であるK/BBが続いて高かった。打者編における三振率と同じく、二軍より一軍で数値が良化することが少なく、多くの選手において似た傾向であったことが原因と考えられる。
奪三振率(K%)の決定係数は低かった。打者の三振率は一軍と二軍との間で相関がある、すなわち自身の力量に依存する傾向が見られた一方、投手の奪三振率は一軍と二軍との間で相関がほとんどない、すなわち対戦打者の能力によって変動する可能性が示唆された。二軍打者から高い奪三振率を誇る投手が複数いる中で、その投球が一軍打者からも三振を奪えるか否かは球種や球速をはじめとする様々な要因によって異なるのだろう。
防御率、被本塁打率(被HR%)、FIP、WHIPについては決定係数は低かった。これらも同様に対戦打者の能力によって変動が大きいため、一軍と二軍との間で相関を示さなかったものと推測される。
現状、投手の成績の良し悪しを評価するのに最もよく使われているのは防御率であろうが、決定係数は0.0011であり相関は無いと言って差し支えない。二軍から戦力を発掘するにあたって、防御率は参照するべきではないということが示された。
まとめ
一軍成績と二軍成績との間において、与四球率には一定の相関があることが示唆された。
【2019野手編】一軍成績と二軍成績との関係性を調査する
背景と目的
入団一年目から一軍で好成績を残して定着することができるプロ野球選手はほんの一握りであり、多くの選手が二軍で結果を残したのちに一軍昇格を果たすことになる。一軍で活躍できる選手を的確に抜擢するのは、球団のコーチやスタッフをしても困難な作業である。その困難な作業を遂行するための方法の一つとして、今後一軍で残すであろう成績を過去の二軍成績をもとに定量的に予測するというものを提案したい。本検証では、一軍および二軍両方で一定以上出場した選手の成績を分析することで、一軍成績と二軍成績との関係性を調査した。本稿では野手についての調査結果を記載する。
対象選手
2019年に一軍および二軍両方で100以上の打席に立った選手、計26人を対象とした。
左から、球団、背番号、名前、守備位置、開幕時年齢、年数
広 4 小窪 哲也 内野手 33 12年
広 51 小園 海斗 内野手 18 1年
広 96 メヒア 内野手 26 4年
ヤ 00 奥村 展征 内野手 23 6年
ヤ 8 中山 翔太 外野手 22 1年
ヤ 31 山崎晃大朗 外野手 25 4年
巨 33 ビヤヌエバ 内野手 27 1年
巨 51 田中 俊太 内野手 25 2年
巨 56 山本 泰寛 内野手 25 4年
巨 60 若林 晃弘 内野手 25 2年
De 1 桑原 将志 外野手 25 8年
De 3 梶谷 隆幸 外野手 30 13年
中 4 藤井 淳志 外野手 37 14年
中 42 アルモンテ 外野手 29 2年
阪 60 中谷 将大 外野手 26 9年
日 38 石井 一成 内野手 24 3年
日 45 平沼 翔太 内野手 21 4年
日 58 横尾 俊建 内野手 25 4年
オ 00 西浦 颯大 外野手 19 2年
オ 5 西野 真弘 内野手 28 5年
オ 6 宗 佑磨 外野手 22 5年
ロ 10 加藤 翔平 外野手 28 7年
ロ 13 平沢 大河 内野手 21 4年
ロ 42 バルガス 内野手 28 1年
楽 2 太田 光 捕手 22 1年
楽 9 オコエ瑠偉 外野手 21 4年
調査方法
以下の7つの項目について、一軍成績と二軍成績を用いて単回帰分析を行った。
打率、出塁率、長打率、四球率(BB%)、三振率(K%)、K/BB、XR27
※四球率は敬遠を除く
※XR27とは、その選手9人で打線を組んだ場合に1試合で何点取れるかを表す。総合的な得点創出能力を示す指標である。
参照:RCとXR - 野球関連指標まとめ
https://w.atwiki.jp/bbstats/pages/17.html
結果
項目ごとに図を示す。
単回帰分析の結果、決定係数が最も高かったのは三振率(K%)であった。三振率と四球率の商であるK/BBが続いて高かった。三振率は他の項目と違って二軍より一軍で低い数値を記録することが少なく、多くの選手において似た傾向であった(一軍でも二軍でも三振が多い、一軍では三振が多いが二軍では少ない、一軍でも二軍でも三振が少ない)。そのため比較的ばらつきが少なく、7項目の中では最も高い決定係数を示したものと考えられる。
一方、決定係数が最も低かったのはXR27であった。XR27は総合指標であるためそれ自体に説明変数が多く含んでいるためばらつきが大きくなったものと考えられる。
打率、出塁率、長打率、四球率に関しても同様で、打者自身の能力と同時に対戦投手の力量にも大きく左右される項目であるため相関関係を示さなかったことが窺える。
今回対象としたのは一軍二軍両方で100打席以上立った選手である。100打席という基準は不足ぎみであるので、他の年のサンプルを追加する、通算成績を用いるなどの改良が必要であるだろう。
まとめ
一軍成績と二軍成績との間において、三振率には一定の相関があることが示唆された。
【野手】2000年度生まれプロ野球選手の1年目成績【小園根尾藤原世代】
2000年度生まれ野手の1年目成績をまとめました。
注目選手の寸評と来季の展望を記しました。
一軍成績
10人が初出場を、6人が初安打を記録しました。
小園海斗
特筆すべきはやはり広島・小園海斗でしょう。正遊撃手であった田中広輔の不振および故障離脱を機に出場機会を獲得し、同期の中でダントツの40安打、4本塁打を放ちました。2019年の高卒1年目野手で最も活躍した選手と言えるでしょう。菊池涼介のMLB移籍が実現すれば、来季は規定打席到達も十分あり得るでしょう。
また、若手選手の登竜門とされるフレッシュオールスターゲームでは、先頭打者ホームランを含む2安打1打点でMVPを獲得しました。
藤原恭大
1番センターで開幕スタメンを勝ち取ったロッテ・藤原恭大でしたが、打撃で苦しみ一軍定着とはなりませんでした。来季にあたっては、マーティンの残留決定や福田秀平のFA加入により出場機会は限られそうです。
二軍成績
22人が出場しました。
山下航汰
1年目にして二軍で首位打者のタイトルを獲得した山下航汰。育成ドラフトでの入団ながら打ちに打ちまくり、7月5日には支配下登録を勝ち取りました。育成指名選手の1年目での支配下登録は球団史上初でした。一軍初安打も放つなど、今後を嘱望される選手の一人です。一軍定着のためには、不安視されている守備力の向上が不可欠でしょう。
太田椋
若手育成に舵を取ったオリックスの次世代を担うのが大型内野手の太田椋です。ショートを守りながらOPS.743をマークし、非常に将来性を感じさせられる選手です。同い年の宜保も遊撃手ですが、同時に出場する際には宜保がセカンドに回るケースが多かったようです(逆パターンもあり)。上記の山下とは中学時代チームメイトでした。
他にも4球団競合ドラ1の根尾昂、二軍で14本塁打の万波中生、濱田太貴や野村佑希、羽月隆太郎や林晃汰ら、将来が楽しみな野手が大勢います。来季以降の活躍に期待しましょう!